ひすい輝石 jadeite NaAlSi2O6 [戻る

単斜晶系 二軸性(+),2Vz=60〜70° α=1.640〜1.658 β=1.645〜1.663 γ=1.652〜1.673 γ-α=0.014(Ca,Feなどを含むと屈折率・複屈折が高まる)

色・多色性/
無色でなし。まれにAl⇔Crの置換で緑色を帯びるものがあり,これは黄色に変化する著しい多色性がある(コスモクロアとの中間体でクロム鉄鉱に密接に共生する)。

形態/
柱状〜長柱状。不規則他形。

双晶/
(1 0 0)の双晶が存在することがあるが,双晶は少ない。

へき開/2方向(C軸方向)に明瞭。C軸方向からはほぼ90°に交わる格子状に見える。C軸に直角の方向からは1方向しかないように見える。
消光角/C軸に直角の方向から見た,1方向しかないように見えるへき開線に対し,最大35°前後(b軸方向から見た場合。透輝石・普通輝石よりもやや小さい)。
伸長/消光角が大きいので伸長の正負はわからない。


累帯構造/
しばしばNa⇔Ca,Al⇔(Mg・Fe)などの置換による累帯構造があり,Ca・Fe・Mgの多い部分は干渉色がやや高いため,クロスニコルで累帯構造が認められる場合がある。

産状/高圧型の変成帯に固有の鉱物で,青色片岩中に藍閃石,石英,ローソン石などに伴い,細かい柱状集合体や粒状をなすほか,青色片岩全体を貫く細脈をなすこともある。また蛇紋岩中に堅固な塊状(ひすい輝石岩)をなして産することもある。高温低圧の変成岩や火成岩には産しない。
※Na⇔Ca,Al⇔(Mg・Fe)の置換が半分程度進んだものは透輝石(灰鉄輝石)との中間体で,青色片岩や時にエクロジャイトやひすい輝石岩中に産する。そのような化学組成の輝石で,オンファス輝石と呼ばれるものは,M2サイトでCaとNa,M1サイトでAlと(Mg・Fe)が秩序配列している輝石であるが,今まで報告されている「オンファス輝石」について,その原子の秩序配列の度合いが調べられている例は少ない。





蛇紋岩中からの塊状ひすい輝石(ひすい輝石岩)
Anl:方沸石(それ以外は全てひすい輝石)
全体が微細〜やや粗い柱状のひすい輝石の集合体(末期生成部はやや粗い)。上画像のものはいずれの部分もNaAlSi2O6の端成分に近く,干渉色は1次のオレンジ色程度まで。
一見してぶどう石に似るが,ひすい輝石は屈折率がやや高く,へき開や粒界がはっきり見え,干渉色はやや低く斜消光する。
また,透輝石に比べ,干渉色が低く,消光角がわずかに小さい傾向があり,ひすい輝石に透輝石成分が固溶してくるとやや干渉色が高くなる傾向がある(朱色〜赤色)。
ペクトライトは消光角は最大20°程度で,干渉色が2次に達し,区別できる。
しばしば,ひすい輝石の末期生成の粗い部分の結晶粒界には,上画像のように方沸石(Anl)などの沸石類などが充填している。



Crを含むひすい輝石
クロムスピネルに富む超苦鉄質岩が高圧型変成帯のNaに富む変成流体の作用を受けたもの。視野の大部分が数wt%のCr2O3を含むひすい輝石(コスモクロア(NaCrSi2O6)成分の固溶)で黄色〜緑色の明瞭な多色性を示す(X´=黄色,Z´=緑色)。消光角は普通のひすい輝石とあまり違いはなく,干渉色はわずかに高い。なお,黒色不透明のものはクロムスピネルで,それは周囲から特にコスモクロア成分に富むもので交代され,そのコスモクロアは平行ニコルで緑色や黄色が濃く,多色性が極めて強い。